研究内容



目標:

(1) 生理活性脂質、特にスフィンゴシン1-リン酸(S1P)、リゾホスファチジン酸(LPA)の作用機構の解明とそれに関連した薬剤の開発。

(2) 細胞外pH(プロトン)を感知する新しいG蛋白連関受容体の生理的ならびに病態生理学的な役割に関して、特に中枢神経系、骨代謝、炎症性疾患に焦点をあて解明する。




現在進行中のプロジェクト










現在進行中のプロジェクト



1. 脂質性メディエーター作用解析と受容体を標的とした薬剤開発


スフィンゴシン1-リン酸(S1P)やリゾホスファチジン酸(LPA)などの脂質性 メディエーターは細胞膜受容体を介して細胞増殖、遊走、アポトーシスなどさ まざまな細胞機能に関わっている。現在、これらの受容体としてS1P1〜5、LPA1 〜6が知られている。我々はLPA受容体拮抗薬Ki16425の作用機序を明らか にした。この薬剤は基礎研究、また、各種病態たとえば、癌(膵臓癌、グリオー マ)、慢性リウマチ、動脈硬化症などの治療薬としても期待される(図1)。

(1) S1P結合蛋白質アポリポプロテインMのS1P産生における役割
(2) LPA産生酵素であるオートタキシン阻害薬の抗癌作用の解析





2. 細胞外pHを感知する新しいG蛋白質共役受容体の機能解析


リゾ脂質性メディエーター受容体として同定されていたG蛋白質共役受容体 (GPCR)が細胞外のpHを感知することを見いだした。従来から知られているプ ロトン感知機構としてはTRPV1等のチャネル機構が知られている。これらのチ ャネルはpH4〜6(TRPV1)、pH4〜7 (ASICs)のプロトン濃度をチャンネル分子上 のグルタミン酸やアスパラギン酸残基が感知し、痛み、味覚など感覚神経で主 に働いている。一方、OGR1ファミリーGPCRは受容体上のヒスチジン残基が pH6〜8のより生理的なプロトンを感知し、神経細胞も含めた様々な細胞に発現 している(図2)。細胞外プロトンは生理的な状態でも40 nM (pH 7.4) 存在し、 腫瘍、虚血や炎症部位では1000 nM (pH6.0)にも増加する。この受容体の生理機 能と病態との関連について、中枢神経系、骨代謝、炎症性疾患を中心にsiRNA によるノックダウン細胞、ノックアウトマウスを用いて解析している(図3)。

(1) ミクログリアや神経細胞におけるプロトン感知性GPCRの役割
(2) 骨代謝や腫瘍形成におけるプロトン感知性GPCRの役割
(3) 喘息モデル、脳虚血モデル、関節炎モデルを用いたプロトン感知性GPCRの役割の解析
(4) プロトン感知性GPCRアンタゴニストの特性の解析(図4)